子育ての最終ミッションー無事とはいかずとも生き延びた話-4-
2回の手術を終えて翌日、私は集中治療室(ICU)でおとなしく安静にしていましたが、朝からレントゲンやら、超音波(妊婦さんが胎児の性別とかを確認するあれですね)の機械やらをベットサイドに運んできて、いろいろ検査されました。
そうするうちに、食事はできませんが昼過ぎに執刀医に先生が来て、
「超音波の画像を循環器の先生に見せたところ、大動脈解離になっている。すぐ手術しなければならない」と言われました。
「奥さんには連絡した。こちらに向かっているところなので、到着次第詳しい説明をする」とのことで、それからじりじりしながら、妻の到着を待ちました。
その間、執刀医の先生や麻酔医の先生たちはスタンバイしてくれていたようです。
午後2時30分ごろ、妻が到着し、循環器の先生の説明を聞いたところ、
「大動脈が心臓のすぐ上から、足の付け根まで裂けている。裂けているところを人工血管にする」ということでした。
私「手術しないで、安静にして温存する。というような選択肢はありませんか」
先生「いつとは言えないけど、100%この病気で死ぬ(もはやそおゆうレベルではない)」
私「この手術は、日本で何例目というような手術でしょうか」
先生「それほど、珍しい手術ではない(経験がある)」
話を聞いていたところ、執刀医の先生はそれなりに自信がありそうだったので、
「わかりました。お任せしますので、よろしくお願いします」ということにしました。
すぐに、ベットごと手術室に移動しました。
横を歩いていた先生に、
「まさか自分が人工心肺を使うことになるとは思いませんでした」と言うと
「でも、人工心肺の存在は知っていた?」
「まあ、マンガや小説に出てくるので」と答えましたが、実は最近の医療マンガは整合性を重視するので、人工心肺のリスクなんかもちゃんと書いているんですよ。というのは心の中で言いました。
そして、2日間で3度目の全身麻酔です。もちろん、手術中のことは何もわからず、目が覚めてみれば、またICUのベットの上です。妻と娘と東京在住の親戚が来てくれていました。時間は午前1時過ぎです。
それからは朦朧として、しばらく記憶はあいまいになります。
ある程度意識がはっきりしてから自覚できたのですが、喉と鼻にチューブが入っているので話すことができません。もちろん、飲水、飲食一切できません。おしっこは管でタンクに貯められ、体のあちこちに管が刺さって血液やらなんやらを排出しています。
両腕には点滴の針が刺さって、数種類の点滴がぽたぽた落ちています。
足にはフットポンプという装置が取り付けられて、血栓の予防をしています。
こうして、手術は無事に終わり、ICUでの入院生活になるのですが、なかなか稀有な体験でした。
続く